日立造船と日本気象協会などが参入を目指す国内最大規模の洋上風力発電計画で、輪島、珠洲市の能登沖が複数の候補地の一つに挙がっていることが20日、関係者への取材で分かった。日立造船などは同日、輪島市内で風況調査施設の整備を開始。10月から両市内で風速や風向などのデータを収集する。しかし、沿岸漁業権を持つ石川県漁業協同組合は「事業化は容認できない」としており、能登沖で事業化されるかどうかはまだ不透明だ。
調査地点は輪島市の舳倉(へぐら)島と曽々木漁港、珠洲市旧日置(ひき)小中敷地の3カ所。それぞれ高さ約50メートルのポールを立て、風速、風向センサーを取り付ける。
日本気象協会にデータが送信される仕組みで、同協会は20日、曽々木漁港でポールを整備した。21日には旧日置小中に設置し、10月から調査を開始。舳倉島には来月中にポールを設け、11月からデータを収集する。
日立造船などは今月4日、洋上風力発電参入を目指し、研究会を設立したと発表した。今年度中に複数の候補地を選び、来年度に事業化の可否を判断する方針。風況調査を担当する日本気象協会は輪島、珠洲市に対し、調査のため、市有地3カ所の使用許可を申請し、許可を得た。
計画では、2015(平成27)年度に風車の整備を始め、22年度に合計出力を30万キロワット規模まで拡大。30万キロワットは中規模の火力発電設備1基分に相当し、洋上風力としては国内最大級となる。投資総額は1200億円程度に上る見通しという。
これに対し、石川県漁協は8月21日の理事会で、事故や水産資源への影響が懸念されるとして、「洋上風力発電の設置を前提とするものであれば、風況調査に反対する」と決議した。石川県内の漁業関係者の間では「輪島、珠洲沖の海上で採算性が確立されれば、事業化に進むのではないか」との疑念が拭えない。
輪島沖では昨年から洋上風力発電計画が持ち上がっている。関係者によると、今回の風況調査データは輪島、珠洲市以外の地域でのシミュレーションに応用でき、現時点で事業化の候補地が能登沖に絞られているわけではない。日本気象協会は「輪島市などで調査を行うのは事実だが、候補地を含め詳細は答えられない」(営業部)としている。
[北国新聞 2012.9.21]