高句麗史 2
2.先史時代の欠落
歪曲事例
ハンガリー:「朝鮮において旧石器・新石器時代の人骨が発掘された事例はなく、朝鮮先史時代は未知である。」(ゴンドロット社1984年版、世界の人々)
チェコ:「朝鮮に先史時代が存在するとの記述はない。また、朝鮮史の起源も記述はない。唯一記述があるのは、3国時代の国々、高麗王朝、朝鮮王朝である。」(オデオン社1993年版、エンサイクロペディア)
解説
ポーランドの参考資料などに韓半島の先史時代に関する記述は幾つかある。しかし、韓半島に旧石器時代はないとする主張は、韓半島の歴史が中国や日本の歴史に比べ比較的短いという誤解によるもので、この誤解に基づいて旧石器時代はなかったとする記述が散見される。韓半島の古代史に関するこれら歴史的歪曲は、韓半島で発見された考古学的遺跡の存在を知らないか、あるいはその価値を蔑ろにした結果である。中国と韓半島は陸続きであるにも関わらず、別個に捉えようとして、問題を更に悪化させている。
韓半島内において初めて旧石器時代の出土品が発見されたのは、1930年代、咸鏡北道の鐘城郡豆満江沿いのトングァンジンにおいてであった。しかし、他に同様の遺跡が発見されなかったため、学者達は韓半島の旧石器時代の存在に確信が持てなかった。
しかし、1962年、同じく咸鏡北道のウンギ郡クルポ里において旧石器時代の遺跡が発見された。また、1964年から1972年の忠清南道石壮里発掘調査でも旧石器時代の出土品が発見され、韓国の考古学界は旧石器時代の起源の存在をより確信するに至った。石壮里は韓半島最古の旧石器時代の遺跡である。同遺跡では、旧石器や中石器時代の出土品も発見された。韓国考古学界にとって石壮里遺跡は非常に重要な意味合いを有する。旧石器時代の遺跡の側で発見された丹陽の金窟とサンウォンのコムンモル洞窟は、放射性炭素年代測定方式によって、60万年から70万年前に遡る。朝鮮の最南部に位置する済州島のビルレモッ洞窟では旧石器時代の出土品が発見された。1万年前まで下る旧石器時代の遺跡も発見されている。これまでに計25カ所の旧石器時代の遺跡が韓半島で発見された。直立猿人からホモサピエンスまで旧石器時代の原始人が韓半島に生息していたことは明白である。平安北道のスンニサンではホモサピエンスの顎骨が発見され、学者らは発見場所の地名にちなんでスンニサン人と名付けた。研究成果により、この人物は1万2千年から5万年前の旧石器時代に生きていたことが判明した。今では、旧石器時代が中国と満州だけではなく韓半島にも存在していたことが広く認知されるようになっている。